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電子書籍名言・引用まとめ

世に棲む日日(三) (文春文庫)

司馬遼太郎

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井上聞多  伊藤俊輔  このふたりの背のひくい若者が、袖口にあぶらのにじんだだぶだぶの洋服を着て横浜に密入国してもどったのは、元治元(一八六四)年六月三日のことであった。

かれらの留学は中途半端におわった。しかしかれらはそのために日本の歴史に参加することができ、とどまった者は単に西洋仕込みの知識人というだけにおわった。この両グループのその後の人生の道すじは、このときに分岐したのかもしれない。

晋作ほどこの藩を愛した者もいないが、反面、晋作ほどこの藩がこれから辿るべき悲惨な運命を、火を見るような瞭らかさで予見していた男もすくない。さらに予見しつつもそれを冷酷にながめようとしていた男は、かれのほか皆無であった。かれが英雄とか天才といわれる存在であるとすれば、かれがやったかずかずの奇策などにそれがあるのではなく、この雄渾というほかないような心胆にあるらしい。

太平洋戦争のベルは、肉体をもたない煙のような「上司」もしくはその「会議」というものが押したのである。そのベルが押されたために幾百万の日本人が死んだが、しかしそれを押した実質的責任者はどこにもいない。東条英機という当時の首相は、単に「上司」というきわめて抽象的な存在にすぎないのである。

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